坂元裕二の脚本を語れるほど作品を観ていないけれど、この春は2本が同時期に劇場公開されたこともあり観てみることにした。「ファーストキス」はタイムスリップ的な土台の上で、夫婦の愛情を描く。予告編やテレビCMの雰囲気とはちょっと異なるが、松たか子のコミカルな演技などに好印象。「片思い世界」は一緒に暮らす3人の若い女性が、なぜ一緒に暮らしているのか、そして各々が抱える葛藤などを描く。こちらも舞台設定がファンタジー的なもので描き方はリアルなのだけど、設定はタイムスリップ以上にフィクション。
宣伝などではどちらも共感を集める感動作、みたいになっているが、どちらも自分にはフィットしなかった。ただ、主人公が3人いるような片思い世界より、松たか子中心に描いているファーストキスの方が好みではあった。

※なぜか片思い世界はサムネイルが出ない。<meta property=”og:image” content=”https://kataomoisekai.jp/assets/images/share6.jpg”>が、AccessDeniedになっている。
ここからネタバレになります
「片思い世界」の主人公の女性は、不幸な無差別殺人で同時に殺された合唱部の仲良し3人組であり、幽霊である。この映画を見に行ったのも、そんな少し現実離れした舞台設定に興味を持ったためだ。その3人は、現実とは接触も会話もできないけれど、暖かい家族のように暮らしており、映画では、その明るさと、それぞれが持つ悩みやトラウマのようなものが並行して描かれている。
ただ、SFなどでは、現実離れした舞台設定が、いかにも違和感無いように注意深く物語が構成されているように思うのだけれど、片思い世界は、女性を描く一方でわりと設定を納得させる注力が足りないような印象をうけた。主人公も3人居る。もし主人公が一人なら、もっと深く納得感が持てるように描けたのではないかと思ってしまった。
ファーストキスを評価している人、好きな作品という人は、よくいるような気もするし、ある程度理解できるけれど、片思い世界は、シビアなブログ記事もいくつか見かける。見る側がかなり思い入れないと「褒めモード」にはいれないような印象だ。