映画「国宝」を見た 舞台や映像がすごいけれど感情移入は…難しかった

高評価が続く映画『国宝』を観た。正直、歌舞伎について、あまり詳しくないので登場人物の「歌舞伎の世界での凄さ」みたいなのもが、いまいちピンとこなかった。周囲の登場人物が、劇中で凄いと評しているけれど、それを「たしかに、そうですね」と受け取れる素直さも自分にはなかった。ただ、舞台設定、プロットが二人の主人公を歌舞伎スターとして扱っているのは当然理解して映画を楽しんだ。

特に舞台というか、ロケ地には目がいった。二人の主人公が学生時代に橋の上で交わす会話の場面。少し郊外都市のような橋の実物をみてみたい。

自分が以前に南座の舞台裏を見学したこともあり、芝居の裏側を描くシーンにリアリティを感じた。南座の部隊見学ツアーは、映画を見た人にはお勧めだ。舞台のせり上がりや、花道の先などがツアーではしっかりと見学できる。

物語は、二人の関係が栄光と不遇を繰り返し入れ替わるドラマチックな構成で進むが、その間の心情描写は意外とあっさりしており、どちらかに深く感情移入することはなかった。ドキュメンタリーを見ているような感覚。演技や映像そのものの力には引き込まれた。

大写しになる顔の表情は圧巻で、完成された化粧と崩れた顔のどちらにも力があった。見える範囲が小さいテレビと違って、舞台や映画での演出ではあまりしないと、以前通っていた脚本学校で習ったが、この映画では多用された「顔のドアップ」も迫力があった。

麒麟・川島のツイートでの感想が、自分の感想とも似ている。「国宝」で、大風呂敷を広げて自説をあれこれ語ろうとするツイート類などより、自分の受け止めた素直な印象が大事なんだろう。

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