スペイン巡礼路と熊野古道の両方をあるいてゲットしたデュアルピルグリム。そのゴール後に、ぜひ行きたかったのが世界遺産に登録され唯一の入浴できる温泉となる「つぼ湯」。これに苦労して…入ってきた。

つぼ湯は、自分が歩いた熊野古道・中辺路ルートからは外れていて、ルートのゴールである熊野本宮大社に到着した後、バスで行かなければならない。ただ、バス便はとても少ない。つぼ湯に入れても、その後にバスがあるかも不確かだ。
なにより、つぼ湯に入るには、入浴の順番待ちをしなければいけない。何人待ちになるのかは、行って並ばないとわからない。一人、あるいは一組(家族や友人がいっしょに入る場合)、上限30分となっているので、3人が順番待ちをしていたら、90分後にならないと自分の番にならない。その状況が不確かで、その後バスがない可能性も大きいので、「本宮にゴール→バスで移動してつぼ湯」と計画することはできない。
なにより、世界遺産・つぼ湯は旅行者なら行きたくなるスポット。かなり順番待ちに並ぶと聞いた。予約は取れず、現地で入浴券購入の窓口に並ばないといけない。
事前の計画段階でつぼ湯は、あきらめかけていた。ゴール後に、急いで和やか新大阪に出て新幹線にのって東京方面に帰ることも不可能ではないけれど、慌ただしいので新宮に宿を確保していた。そこで、ゴール後にバスで新宮に向かい、ホテルに宿泊。翌日、つぼ湯にあらためて行くことにした。
新宮からつぼ湯へのバスも少ないので、つぼ湯だけのためにレンタカーを予約した。
当初、8時くらいに新宮を出発しようかと考えていたが、中辺路で出会った人が「朝5時くらいから並び始める」といっていたので、その「朝5時」につぼ湯に到着して順番待ちに加わることを決心した。
起床したのは朝3時半。前日夕方に借りておいたレンタカーに4時に乗って一路つぼ湯に向かった。真っ暗。熊野川沿いを、本宮方面にひたすら走る。街灯はないが、道路沿いの反射板が十分に整備されていたので暗闇の中を走るような怖さはなかった。ただ、5時頃「もや」がかなり発生していて、ヘッドライトの先がけむっていた。もやが毎日のことなのか、自分が走ったときだけなのか分からないけれど、中辺路を3日歩いた感じだと、明け方はもやが発生しがちな印象があった。
無事につぼ湯のある湯の峰温泉に到着。公共の駐車場に駐車。つぼ湯に向かった。つぼ湯の順番待ちも「どこに並べばいいのか」が事前に分からなかったのだけど、一人だけ5時に並んでいた温泉好きの男性がいたので、その隣におじゃました。
つぼ湯の順番待ちは、「湯の峰温泉・公衆浴場」の前に並ぶ。(Googleマップのストリートビューの写真は、25年秋に見た限り、少し古い。現在は公衆浴場はリニューアルされ建物がきれいになっている)
公衆浴場に、ゆるくあがるスロープがあり、その右側に自販機・入浴券の券売機が並び、その奥に、小さな窓口がある。自分が行ったときは、この窓口付近のスロープ脇に、先頭に並んでいる男性が腰掛けていたので「つぼ湯待ちですか?」と話しかけてから、隣におじゃました。場所は、下記の「赤い線」のあたり。(誰もいなかったら、どこに並んでいいのかわからなかったと思う)

6時少し前になると窓口に担当の人がやってくる。窓口に明かりが付いて、中に担当の人が着席されて、先頭の人に軽く声をかけたりして受付がはじまる。先頭に並んでいた男性は、慣れているようだった。券売機でチケットを買うと券売機脇の窓口の担当の人が「1」と書いた札を渡してくれた。担当の人が、自分にも2番目か確認し、札をくれた。それと前後して券売機で自分と奥さんとがチケットを買った。夫婦でチケットは2枚になるけど、家族でセットでつぼ湯に入るので整理札は「2」を1枚だけくれた。入り口に札をかけること、30分制限であること、つぼ湯入り口はカメラで見ていること(浴室内は見ていない)といった簡単な説明があった。2番目の自分は、先頭の人が入ってから30分後に入れる。
自分が2番に並んだ後にも、何組か並んでいて、入浴開始の6時には、4〜5組いたようだ。
券売機での購入、担当の人からもらう順番待ちの札の受取、などが、どんな順番になるのか、ウェブの説明にあまり詳しく書いていなかったが、担当の人は券売機のすぐそばで様子を見ているので現場で迷うことはなかった。
つぼ湯は、湯の峰温泉を流れる細い川沿いにある。その川の両脇に旅館が並んでいる。川はけして広くはなくて、その脇の狭い岸のような場所に小さな小屋がある。小屋に「つぼ湯」と書いてある。

旅館などが並ぶ川岸に、順番待ちの人がいられる場所があり、そこから階段で降りていく。つぼ湯の小屋の前に、囲われていないが靴を脱いだり荷物を置けるベンチみたいな場所がある。靴はそこで脱ぐことになる。貴重品以外は、このベンチみたいな場所に置いていく。雨が降っていると、ここに置いたものは、濡れちゃいそうだ。小屋の扉を開けると、そこからまた少し階段で降りて、湯船と洗い場のある「つぼ湯」がある。


自分が入ったときはお湯は白濁していた。1日のうち何度か色が変化するとか聞いていたけど、あまり明るくない小屋の中で、着替えや身支度も含めた30分制限もあって、お湯の色をあれこれ見る余裕はなかった。
つぼ湯は、床に掘った穴のようなもので「陶器の壷」などがあるわけではない。底には砂利よりは大きめの丸石がごろごろあった(見えなかったけど、足の感触で)。厚い源泉は、奥の方の岩の合間から注がれているようだった。暑すぎる場合は、つぼ湯の脇にある蛇口をひねって水をいれる。1番目に入る人は、適温に調節しないと自分自身が入れないので、一手間かかるそうだ。2番目以降は、前の人の油温でよければ調節不要。
写真のように洗い場といっても狭いこともあり、ここで石けんやシャンプーをつかうことは、ほぼなさそう。
11月中旬の朝は寒かった。着替える間も寒かったが、つぼ湯はあたたかく、ほっとくつろげた。
つぼ湯を終えて身支度をすませて退出。券売機や窓口の脇にある「公衆浴場」にも、つぼ湯のチケットで入ることが出来るので、すぐ公衆浴場にも入った。リニューアルされた公衆浴場は、脱衣所・風呂場ともに、明るくてきれい。時間も気にせずゆったりと温泉につかった。
脱衣所で、オートバイで湯の峰温泉に来た男性と世間話をした。彼もつぼ湯目当てで来たけれど、2時間待ちといわれて、あきらめて公衆浴場に入って帰るといっていた。しかし、風呂からあがって券売機脇の窓口を見ると「60分待ち」の札がかかっていた。順番待ちの行列もなかったので、男性に「60分なら、いまから待ってつぼ湯にはいったほうがいいよ」とアドバイス。さっそく、彼はそうすることにしたようだ。
つぼ湯の混雑具合は、曜日や時間帯でまったくマチマチなのだろうから、なかなか予定を組みにくそうだ。思い出と話の種にはなるので、チャンスがあればチャレンジするとよいのだけど…。
